真似っこで5秒日記を書いてみた。(楽しい)

『5秒日記』とは、エッセイストの古賀及子さんが書く日記の手法である。

5秒でさらっと書き留めるいわばメモ感覚の気軽な日記なのかと思ったが、そうではないらしい。1日の中のほんの5秒の出来事を、200字かけて書くのだそうだ。

 

hokuohkurashi.com

 

その命名スタイルに、『キューピー3分クッキング』を思い出した。

「3分クッキング」の「3分」は、3分で作れる料理ということではなく、放送時間が3分という意味だ。

事実誤認したまま視聴していた子どもの頃、魚の切り身を合わせ調味料に30分漬けたものがいきなり出てきたり、これをオーブンで40~50分焼きます、とたったいま説明されたばかりのパウンドケーキの焼き上がり品を次の瞬間からデコレートし始める様子に「全然3分じゃないじゃないか!」と立腹したものだが、後に本来の意味を理解し、なるほどそうだったのかと納得した。

でも今ふと気になって、キューピー3分クッキング、とネットで検索してみた。

すると、新たな情報が得られた。3分クッキングは、放送開始当初はタイトル通り正味3分の放送時間だったが、1969年10月からは10分に延長されていたらしい。私が見ていた頃にはもう、どちらの意味でも3分ではなかったということだ。

 

それはさておき、私も5秒日記を書いてみた。

思いのほか、楽しい。

(ただし200字縛りについては、字数を数えるのがめんどうなのでスルーする。)

 

 

2/7(水)

妹宅で、姪っ子(7才)に「きて」と手を引っ張られ、トイレにつきあう。

彼女はまだ、夜のトイレに一人で行けない。

便座に座ってお尻に力を込め(うんちだった)、顔を真っ直ぐ私の方に向けて、人差し指でとんとんと自身の頬骨のあたりを叩きながら

「メイ(姪)ちゃんね、赤ちゃんのベッドに寝てた時のこと、目に残っとるんよ。」

と言う。目に残っている。なんだか詩的な言い回しだな、と思った。

「じいじのおうちでね、メイちゃんが眠いなあって思ってたら、パパが来たんよ。お仕事の帰りだったんだと思う。メイちゃん眠かったのに、パパに起こされたん。パパが、メイちゃーん、メイちゃーん、って頭撫でてくれたよ。」

「そっかあ。そこにおばちゃん(私)は、いた?」

何気なく聞いた質問に、彼女はえっ、と意表を突かれたような顔をして

「あー… いた!だって、なんか背中があったもん!メイちゃんおばちゃんの背中見たよ!あれは絶対おばちゃんの背中だった!」

と必死で背中背中と繰り返していた。小1に謎に気を遣われたっぽい。

さらに彼女は「あっ!あの日は水曜日だったわ!まじで!」とつけ加えた。

嘘に嘘を塗り重ねるタイプ。

 

 

2/9(金)

「売れるネット広告社」の株価の爆上がり様が、えぐい。

「売れるネット広告社って何なの?化け物なの?なんでわたしここ(の株)持ってないの?」といつものごとく就業中にスマホを握りしめててわーわー騒いでいると、後輩の営業男子に

「株取引なんてまじでただのギャンブルっすよね」

と言われた。

いやおまえのと一緒にすんなしー!

彼は株はやらないけれど、競馬・競艇・競輪・パチンコには熱心に取り組んでいる。

「私はね、応援したい会社に投資してるんよ!ギャンブルと一緒にしないでもらえますか!」

「いや自分も応援したい馬を買ってるんで」

「馬券はそのレース一回きりで、負けたらただの紙屑じゃんか。株はよっぽどじゃない限り、我慢して何年も持ってればプラスになる可能性があるからね!!」

「なるほど」

「まあ、塩漬け、ていう言葉もあるけどね…。私、5年くらい前に戻って、ジャパンエンジンとさくらインターネットの株買い集めたい」

「いや気の長い話だな!それこそ1日だけ戻って昨日のレースの馬券買った方が早いじゃないっすか」

て言われて、あっ、ほんまや、と思った。

 

 

2/10(土)

土曜日だけれど、今日は出勤日。

月曜日は建国記念日の振替休日で、火曜日は有休をとっているので、日曜日から3連休になる。

「せっかくの3連休、なんか予定あるの?」

と世間話のついで程度に所長に聞かれ、「ないです」と答える。

(ちなみに、今まで所長に「なんか予定あるの?」と聞かれて「ある」と答えたことは一度もない。)

「あ、でも、すごい人気の古民家カフェがあって、平日ならちょっとは空いてるかもしれないからそこに行ってみようかなーって思ってたんですけど、営業日確認したら火曜日は休みだったんですよねー。」

「古民家カフェ?なにそれ?」

「え、古民家カフェ、聞いたことありません?古い民家をカフェに改築してて。最近多いんですよ。女子は古民家カフェが大好物です。」

「へー、じゃあうちもカフェ開いたら繁盛するかも」

「カモデスネー」

適当に返事しながら、「女子は古民家カフェが大好物です」よりも「35歳過ぎた女子は古民家カフェが大好物です」の方がより正確かもしれないな、と思ったけれど、わざわざ訂正するほどのことでもないのでそのままにした。

 

 

2/12(月)

知人と二人で食べたサムギョプサル(初体験)が、めちゃめちゃ美味しかった。

めちゃめちゃ美味しかったけれど、たぶんこの店はそう長続きはしないだろうから食べれるうちにまた来よう、という結論になった。

「だってここってちょっと前まで雑貨屋だったよね。」

「うん。その前は何だっけ。」

「忘れた。ていうか、雑貨屋とサムギョプサルの間にもなんかちがう店一回挟んでるかも。」

「店の規模が小さすぎるわ。あとこんな田舎でオシャレ過ぎる。」

「店員さんイケメンだったね。あんなチャラい系イケメンなのに接客態度がちゃんとしてるとか、反則。」

「あの子はこんな町で終わるタマじゃないね。ここが繁盛したとしても、次は都会で勝負したくなると思う。近いうちに松山に行くね。」

「都会って、松山かよww」

好き放題に勝手なことを言い合って、帰宅した。

 

 

…これ全部5秒じゃないな。5秒はむずいな。

後でちょっと古賀さんのやつをちゃんと読んでみよう。

山下清展は、フィクションと現実の交差点だった。

「生誕100年 山下清展 百年目の大回想」に母と行ってきた。

 

山下清という人についての私の全知識は、「ランニングシャツにリュックサック姿がトレードマークの、いっつも線路歩いておにぎり食べてるおじさんですよね?行く先々でいざこざに巻き込まれては、貼絵のスキルと人柄で問題解決してあげてるんでしたっけ?」程度だ。

水戸黄門や、いやどちらかというと浅見光彦シリーズ的なノリに近いお決まりパターンで毎回エンディングを迎えていたような記憶も、うっすらある。

そう、芦屋雁之助さん演じる、『裸の大将』である。

私が朧げながらもなんとなく知ってる気になっているのは、フィクションの方の山下清だ。

 

 

今回初めて本物の方の彼の作品を目の当たりにして、

「姪っ子(7才)の絵みたいだな…」

というのが、率直な感想です。

 

子どもが描く絵のタッチには、大人には絶対に真似できない味わいと愛らしさ、時に大胆さがある。山下清の作品は、「そういう子ども特有の絵を、子どもらしさはそのままに、めっっっちゃめちゃ緻密に精巧にブラッシュアップしたらこうなりました」みたいな印象だった。

画風が、なんともかわいい。

そして描写が細かい。気が遠くなりそうなほど、細細細細細細細細細細かい。

この人は、幼い子どもの感性のままただひたすら何十年も絵を描き続けたせいで、常人ではありえない「超絶技巧の子どもの絵」に到達したのだろうか。それともそもそも持ち合わせていた類稀な感性と技術は最初から既に完成されており、進化を遂げることはなかったのだろうか。

にわかの私にはその辺りのことはよくわからない。ただ実際の山下清は放浪先でスケッチをするようなことはなく(そしてランニング姿でうろうろしてもおらず)、作品のほとんどが放浪を終えて施設に戻ってから記憶だけで描いたものだというので、天才であったことは間違いないのだろう。

彼はその驚異的な記憶力で、何年も前に描いたのとまったく同じ絵を描くこともできたそうだ。怖いな、と思った。何年分も、あるいは何十年分も、もし全部の記憶がまるごと当時のままの感情、感覚を伴って細部まで蘇るのだとしたら、それはとてつもない恐怖だ。

 

山下清のリュックサックの中身は、茶碗2つ(ごはん用、汁物用)、箸、手拭い、着替え、犬に吠えられた時の護身用の石ころ5つのみだったらしい。

なんて身軽なの、と憧れる一方で、チョイスおかしない?という気もする。

茶碗、要る?食事は(おそらく)どこかの誰かに頼る前提で、なのに器だけ自前とか何のこだわりよ?茶碗、地味にかさばりそうじゃない?まさか陶器(割れ物)じゃないよね?私なら食器よりもスマホと財布を持ってくな。スマホ、充電器、財布、タオル、着替え、護身用の石ころ5つ。おっけー、準備万端。着替えを何日分用意するかは清と相談したい。「どうするー?ホテルで洗濯できるよねー?アイロンて貸してもらえるんだっけー?」つって。

 

「でも、いい人生よね」と、旅をして絵を描いて生きた山下清のことを、母はそう評した。

そうなのだろうか。突出した才能には、同時に、誰とも共有しえない孤独みたいなものがつきまとう。彼のことを理解し、評価してくれる人はいても、同じ世界を見られる人はいなかったのではないか。

わかる、そうだよね、って同じ感性で分かち合える誰かがいないのは、寂しい。

 

盛況の山下清展で、特に来場者の目を引いていたのが『長岡の花火』だった。

入場券やパンフレットにも使われていたので、きっと彼の最高傑作のひとつに数えられる作品なのだろう。実際すごかった。

「これは……すごいな」

すぐ右隣で中腰の姿勢で絵を覗き込んでいたおじさんが思わず声を漏らし、

「すごいですね」

って私も同調した。

顔を見合わせて、おたがいにぎこちなく笑った。

自分の死後、自分の作品を前にして、知らない他人同士が言葉と笑顔を交わす。

やはり彼の人生は母の言うように「いい人生」だったのかもしれない。そう思わされた瞬間だった。

 

山下清展を出たのは15時過ぎだった。

1時間もいたね、すごいね、疲れたね、と母と言い合った。

エディオンの福引券あるからイオンに行きたい。」

と言う母につきあって、イオンへ。福引は2回引いて、2回ともハズレだった。

それもまた、いい人生なのかもしれない。

 

 

そういえば小学生の頃、祖母の家にお泊りしていた夜、全然眠気がやってこない布団の中で「もし自分以外の誰かになれるとしたら」と悶々と考えていたことがあった。

私には特別な才能は何もない。勉強の成績は普通だし、運動神経もよくない。かわいくもない。髪がくせ毛なうえに剛毛で、いつも頭がもじゃもじゃなのをクラスの男子にからかわれることが、当時の最大の悩みだった。

クラスで一番かわいいあの子になれたなら、みんなから人気者のあの子なら、いっそのことトップアイドル歌手のあの人なら……色々想像を巡らせたけれど、考えながら、けれどもし自分が別の誰かになってしまったら、自分の心はどこに行ってしまうのだろう?という疑問にぶち当たったのだった。

「わたしの思考が消えちゃうのはいやだから、わたしはわたし以外の誰にもなりたくないな」と明確に自覚したその日のことを、山下清展の帰りにふと、思い出した。

 

初詣2024

一年の中でもっとも好きな日は、12月31日かもしれない。

今年も代わり映えしない一年だったけれどそう悪くもなかったな、というしみじみした気持ちと、なぜか明日からの日々に向けた意欲に満ちている一日。

あと連休の序盤だし。

 

きちんと生きよう、

家計簿つけよう、

ケチらずに節約しよう、

健康的にダイエットしよう、

ささやかで大雑把な目標をとりとめもなく考えては、わくわくする。そしてこんなことでわくわくできているうちは私の人生まだ大丈夫だ、というひとつの目安になってもいる。

 

この十年、ずっと同じ人と初詣にいっている。

彼とは、職場でナンパされる、というしょうもない出会いで知り合って以来の(つかず離れずの)つき合いになる。

「俺晩飯おさえめにしといたから、出店でいっぱい食べれる。」と、王将を出て、初詣に向かう車中で彼が言う。

「出店あるかな。こんぴらさんだから色々ありそうだけど。」と私が答える。

言いながら、どうせ出店では何も買わないだろう、と私達は二人とも既に悟っている。

「お椿さんの時だっけ、肉巻きおにぎり、あれ、くっそ不味かったね。」と彼。

「肉、臭かったもんね。」と私。

子どもの頃の出店の高揚感が俺の中に沁みついていて、そこから抜け出せないのだ、と彼は言う。夜の闇にぼうっと浮かぶ屋台の明かりの列、醤油の焦げる匂い、人混み、カステラの甘い匂い、くじ引き、綿菓子、金魚掬い、イカ焼き、とうもろこし。胸が高鳴ったあの感覚だけがまだずっと残っていて、けれど大人になった自分はもう、そこがパラダイスではないことを経験的に知ってしまっている。だから実際に出店の前に立った瞬間に現実に引き戻され、大人の判断力で「やっぱいらん」って気づくのだ。

 

予想通り、出店では何も買わなかった。

代わりにお土産物屋さんを色々見て回った。

 

KAGAWANIさんというお店で見たお香のセットがかわいくて、はしゃぐ。

 

 

「香皿と香立ての組み合わせは自由に選んでもらっていいですよ」とお店の方が言ってくださり、それ故にさんざん迷う。自由ってむずかしい。むしろ制約をください。

「これとこれ、どっちが好き?」とお香立てとして使うとんぼ玉を二つ摘んで彼に聞き、

「俺はこの皿にだったら、絶対こっち」

「えー?でもそれだと色がぼやけるし…」

と、意見を聞くだけ聞いて従う気はさらさらない、という女子あるあるを発動。

ああでもない、こうでもないときゃっきゃ選びながら、不意に鏡張りの壁に映し出された自身と目が合い、テンションが急降下した。誰ですかこのくたびれたおばさん…。

48才、女。

私は自身の老いと体型の変化に、まだ心が全然追いつけないでいる。

 

さんざん迷ったあげく、結局お店でもともとディスプレイされていた組み合わせのものをそのまま選んだ。見過ぎちゃってもう、かわいんだかどうなんだか、わけわからない。とんぼ玉がゲシュタルト崩壊

 

参道のうどん屋さんで年越しうどんを食べ、店を一歩出た瞬間、「ハァァッピーニュゥーイヤアアアー!!イエェェーーー!!」という叫び声が聞こえた。

声の方を向くと、女子高生くらいに見える若い女の子たちの塊が、一人の子の伸ばした腕の先にあるスマホに向けて思い思いのポーズをとっている。

横で彼がズボンのポケットからスマホを取り出して待受画面を確認し、「ああ、明けたんや」と呟いた。

若さが弾けとるな、と彼女らを見ながら思い、けれど自分にあんな頃があっただろうか?と思い直した。少なくとも私は、「ハァァッピーニュゥーイヤアアアー!!イエェェーーー!!」て叫んだことは人生でただの一度もない。

 

「神様に何お願いした?」と彼に聞いたら、「俺は何も頼まない」と返ってきた。

そういう人もいるのか。私は、叶わなくても神様を恨まずにすむ「ちょうどいいラインの願い事」をすることを心掛けている。あと行き違いがないよう、依頼内容は具体的に伝えることも。

「今年こそコナン君の黒幕の正体がわかって連載終了しますように」って神様にお祈りした。去年も同じことを祈った気がする。

(※金毘羅宮の神様は、航海の安全や豊漁祈願、五穀豊穣、商売繁盛、病気平癒などにご利益のある神様だそうです。コナン君、専門外。)

 

五月雨のメール

所長がパソコンの画面と睨めっこしながら「ああん?」とか「はぁあ?」とか唸っている。そういう時は「『どうしたんですか?』と聞いてくれ」のサインなので、よっぽど忙しいとかじゃなければ極力「どうしたんですか?」と聞くようにしている。

「どうしたんですか?」

「いや、さっきメーカーからメール来たんだけど、『五月雨式のメール申し訳ございません』だって。なんや五月雨式のメールって?」

さみだれしき…?」

「絶対タイプミスやろ。ったく、メールくらいちゃんと見返せっちゅーねん。あいつ本当はなんて言いたかったんだろか?」

さみだれ… さみだれ… さ み…  はて、なんでしょう…?」

 

私たちは二人とも、「五月雨式」というビジネス用語を知らなかった。

しかしながら何をどう入力ミスして五月雨になってしまったのかまるで見当がつかず、「え、まさか、誤字じゃないパターンなの?」つってネットで調べたら、すぐに答えが見つかった。

 

「五月雨式に申し訳ございません」とは「物事が続いてしまい、申し訳ない」という意味を持つ言葉です。 日常会話で使われることはほとんどなく、ビジネスシーンのメールやチャットで多く使われます。 立て続けに連絡してしまったときなど、相手に面倒をかけてしまったときに使うのが適しています。

 

五月雨とは、旧暦5月頃(現代の6月頃)に降る長雨のこと。メーカーさんは、何度もメールを送ることを、梅雨時期にだらだら続く長雨になぞらえて謝罪しているらしい。

「お洒落ですねー!俳句の季語みたい!」と私。

「さすが、上場企業の営業マンはよう言葉知っとるわー。大したもんだ。」と所長。

二人でひとしきり感心してそれぞれの業務に戻ったものの、でも、ちょっとだけ思ってしまったのだった。ちょっとだけね。

 

相手を選んでメールしろよ、と。

 

いやだってね、うちの営業所なんてね、若い男性社員のことを「若い衆」(わかいし)て呼ぶような社風なのよ。

密告のことを「ちんころ」って言うような人たちなのよ。

真に仕事ができる営業マンというのは、相手のレベルまで自分が下りていける人なのではないだろうか。誰を相手にそんな雅(みやび)なメール送ってんのさ。風流気取りやがって。「度々申し訳ございません」でよくない?

 

こういう言い方はあれなんだけど、なんつーか、まぁ、職種柄?みたいな部分が大きいのかなーなんて思ってるんだけど、学校や書籍で得た正しい知識が通用しないどころかむしろ相手の神経を逆撫ですらしてしまうことが、ビジネスシーンでは往々にしてある。いまの職場では、特にある。そういう理不尽を回避するためには、常識はいったん捨て置いて、経験から蓄積されたデータを自身の脳内コンピュータで解析し、最適解を導くしかない。

たとえば私は状況や相手に応じて、「〇〇社長様」と表記することがある。

先方に「二重敬語やないか、こいつアホやな」と思われてしまうかもしれないリスクは(極めて低い確率で)あるけれど、「呼び捨てにしやがって、失礼なやつめ」と不快にさせるよりずっとマシだと思っているから。あと入社したばかりの頃、普通に所長に「様つけろ」って言われたからというのもある。ていうかほぼそれ。私の脳内コンピュータは、主に「所長の気分屋さん」対応に追われている。

 

先日、後輩の営業男子に

「取引先の社長とか部長とかに様つけるの僕気持ち悪いんすよね」

って言われた。

「ああ…まあね。でも私はもう慣れたよ。」

「慣れるとかそういう話じゃなくないっすか。明らかに間違いなのに。」

「おいそこの若いの、人生にはな、正しいことよりも、あえて間違っていることを選択する方が正しい場合があるんだぜ?」

「急に誰w だとしても僕は今後も社長に様はつけません。」

「若いの、そうしたいならそうしろ。おまえがそうすると決めたなら、貫け。」

 

ぶっちゃけ、「社長」か「社長様」かなんて、たいした問題じゃない。

「役職名+敬称は二重敬語になるので間違った日本語です。」というのは正しい知識ではあるが、見方を変えれば所詮知識のひとつでしかなく、私たちはすべての正しい日本語を網羅しているわけでもない。たまたま知っていた一片の知識に固執して正義を振りかざすよりも、相手の気持ちに寄り添うことの方が優先順位は高いはずだ。

ていうかそもそも、取引先の社長は書類の宛名部分なんて絶対気にも留めてないから。ひゃくぱー見てない。なんなら書類の中身もそんな見てない。いや、見ろ。まずはそのA4サイズたった1枚の説明書に一通り目を通してから電話してこい、あなたの知りたい答えはすべてそこにあるから。

 

ちなみにその後輩は「うる覚えなんですけど~」てしょっちゅう言う。

三度の飯かくらいうる覚えうる覚えうる覚え連呼するので、ある時たまりかねて「うろ覚えね」って訂正したら、

「あーはいはいそっちね、でも自分は今後も『うる覚え』でいくんで」

ってどや顔で返された。なんやそら。気持ち悪。

うる覚え」でも「うろ覚え」でもどっちでもいいんで、もうちょっと記憶力を鍛えてくれ。きみ、うる覚えが過ぎるのよ。

でもその日以降、彼の「うる覚え」が、なんか「うるぉ覚え」みたいな、「る」なんだか「ろ」なんだか聞き取りづらくなった。

 

あと、役職にどうしても様つけたいなら、二重敬語問題は「代表取締役社長 〇〇様」「営業部 部長 〇〇様」とすることであっさり解決しますから。

歌えなかったラヴ・ソングを歌おう

 

お題「高校生に戻ったらしたいこと」

 

高校生に戻るにあたり、まずはその前提条件の詳細をお聞かせ願えますか。

「今の記憶・スキルを保持したまま戻る」パターンなのか、それとも「全部リセットされたまっさらな状態で戻る」完全丸腰パターンなのか。そこの設定よーく詰めといてもらわないと。話はそれからだ。

まあでも後者だったとして、まんま当時の私の状態に戻ってもう一度高校生活をリスタートしたとしても、寸分違わず同じ物語を繰り返す再放送が始まるだけです。だって、まだ未来も後悔も知らない、それはただの一周目の16歳の私なんだもん。戻り損。なのでここは「今の記憶・スキルを保持したまま戻る」パターンってことでいいですか?いいですね?

 

え、でもその場合、当時のスキルはどうなりますか?

今の記憶・スキルの状態でいきなり高校生に戻されても、高校の数学とか「ぽっかーん…」なんですけど。いや、ていうか全科目において白目です。あと体力も全然ない。最近息切れも酷いし。「今の記憶・スキルに加え、当時の知力・体力も兼ね備えた状態で戻る」ってことにしてもらっていいですか。

 

あ、いやちょっと待って。あといっこだけお願いしてもいいですか。

私が今の記憶と今のスキルと当時の知力と当時の体力兼ね備えたところで、しょせん私は私。たかが知れてる。せっかくやり直せるなら、どうせなら顔とスタイルを全盛期の広末涼子と交換してもらっていいですか。人並以下だった前の人生の記憶をちゃんと持ってる私ならあの美貌をうまく活かして絶対へんな男には引っかからないし、それに広末さんくらい奔放な方には私くらいの顔面でちょっと抑えといたくらいがちょうどいいのかな、って。(ね?いいよね?

 

あっ…、お願いついでに追加オーダーいいですか。これホントのラストね!

私車酔いがね、酷くて。修学旅行が地獄だったんで、オプションで三半規管丈夫にしてやり直させてもらえませんか。あと視力回復とか、イケますかね?あ、あとできれば花粉症も…

 

さあこれで準備は整った!

 

目が覚めたら、

「あれ…?ここは、どこ…?え、実家の昔使ってた私の部屋じゃん…なんでハンガーに高校の制服がかかってんの…?ていうか部屋も当時のままだし…ジェームズ・ディーンのポスターなんてまだ持ってたっけ…え、なんでブラウン管テレビ…?VHSも…?うわこれ8センチCDだ…織田裕二の『歌えなかったラヴ・ソング』じゃん、懐かしい…

…マジカルバナナ、きんさんぎんさん、冬彦さん、若貴ブーム湾岸戦争千代の富士引退、ヒューヒューだよ!、ソックタッチ、ナタ・デ・ココ…?

(鏡を見て)…え、誰これ?全盛期の広末涼子?…はっ、そうか!私ってばトラックとの衝突事故で死んだショックで全盛期の広末涼子の顔面になって高校生の頃にタイムリープしたんだわ!きゃっほー、人生をやり直そう☆」

つって、ピッコマで見てきた数々の異世界転生令嬢ばりの飲み込みの早さと順応力を瞬時に発動します。

そして高校生に戻った私は、同じクラスの大親友イワマちゃんと教室で机を並べて弁当を食べ、持ち寄ったお菓子をつまみながら昨日見たダウンタウンの話をし、ルーズソックスの適正丈について討論し、ヘアアレンジを過剰に制限する校則を愚痴る。そんな二人の今のブームは、担任の「ですぅ~う」というへんなアクセントの語尾のモノマネの完成度を競い合うこと。

ヒロスエー」そう呼んで、私とイワマちゃんの「ですぅ~う」対決に割って入った馴れ馴れしい男は、野球部のオオタニ。

「俺今日数学当たるんだよね、宿題写させて」

「はぁー?オマエ何勝手なこと言ってんの?」

「購買の焼きそばパン、と、カフェオレ」

「…よっしゃ、手を打とう」

イワマ)「二人、さっさと付き合っちゃえばいいのに♡」

二人)「はああ?誰がこんなやつと」

 

私が欲しいのはそういうばからしいことの積み重ね。

大人になって、社会に出て、自分を取り巻く環境の変化に対応せざるを得ず、皆ばらばらになって、変わっていって、もう親友にも恋人にも戻れなくなったとしても、重ねた日々は消えないから。

いつでも何度でも記録を再生できるよう、何十年先の分までしっかり「青春」をチャージしておく。

 

 

 

 

 

まあでもガチでガチなところを言えば、本当はヒロスエになれなくていいし高校生に戻れなくてもいい。スキルもまぁいい。記憶だけ!記憶だけでいい。

記憶だけ持ってる状態で5年ほどちょちょっと過去に遡って、テンバガー株を大量買いしたいです。

道後かわいいもの探訪

有休をとって、知人と日帰りで道後へ。

 

道後を目指して県道を車で走っていると、「みかんパン」の大きな看板を掲げたパン屋さんに遭遇。朝食に立ち寄ることに。

入口扉横のスタンドボードに、『本日のおすすめ』と写真付きで紹介されている車海老のビスク風にも期待値が高まる。絶対食べる!

店内には、中年の女性が一人レジに立っていて、無言でパンを袋に詰めていた。彼女は私たちを一瞥していらっしゃいませ、と言った(ような気がするけれどもしかしたら何も言わなかったかもしれない)。

何はともあれビスク風、ビスク風、と小さな店内を見渡すもそれらしきものはどこにもない。けれど他にもおいしそうなパンが色々並んでいたので、結局私はバゲットサンドを、知人は菓子パンを何個か選んだ。

レジで支払い時に、店員さんにおそるおそる「あの…本日のおすすめって、何処にありますか…?」と聞いてみると、彼女はポーカーフェイスを崩すことなく「本日のおすすめは11時からです。ボードにもそう書いてあるんですが」とさらっと答えた。時計を見ると、まだ9時ちょい過ぎ。

なるほど。

もしも私がここの店員なら、残念さと申し訳なさを混在させたようなわざとらしい笑顔を作って

「あああ…ごめんなさい!本日のおすすめは11時からなんですよぉ。ボードには一応明記してあるんですけど、あれ字が小っちゃくてわかりづらいんですよね。ごめんなさい!」

て言う。

まず謝る。それから客の気持ちに寄り添う。そして最後にもっぺんダメ押しで謝る。

(実際後で確認したら「11時から云々」の文字はパンの写真右下隅っこに小さく記載されていた。言っとくけどこっちはそんな隅々まで丁寧に見てねえかんな!)

けれど、レジの女性は別に接客態度が悪かったのではない。ただ、愛想がなかっただけ。そしてそういう「ちょっとあれな感じ」は、旅情、とでもいうのか、旅に可笑しみを添えもする。

しかも、パンがめちゃめちゃ美味しかった。

三種類のサンドイッチが入ってたんだけど、バゲットの味が全部違うの。何練り込んでたんだろ…緑っぽかったのは、ヨモギ…?いやわからん(味音痴)、あんだけミカン推してんだから一つはミカンだったのかな、わからんけどとにかく美味しかった。

そして味が良いと、先ほど受けた素っ気ない接客にも、実直さ、みたいな新たな印象が加わる。パン作ってる人と売ってる人は一緒じゃないにしても。

そうだ。同じ接客業従事者として、思えば私はいままでどれほどその場しのぎの作り笑いで他人を、自分を、はぐらかしてきたのだろう…。どれほど心をすり減らしてきたのだろう…。ああ、職人さんがこだわって焼いたバゲットの誠実な味が、荒んだ五臓六腑に沁み渡る。

二十年以上昔、私がまだギリ学生だった頃、女優の江角マキコさんが一般女性の恋愛相談に答えるというバラエティー番組の企画があったことを思い出した。

江角マキコさんのことは『輝け隣太郎』というドラマで初めて知って、綺麗な顔と棒読み風のセリフ回しの取り合わせがなんだかおもしろい人だな、くらいの認識だったが、何故なのかその日の私は、女性達のお悩みに向き合う江角さんの美しさに圧倒され、目が離せなくなってしまったのだった。そしてその理由にも、すぐ気づいた。

この人、人の話に全っっ然相槌を打たないんだ…、と。

彼女は一般女性の失恋エピソードを眉一つ動かすことなく、ただ無言で聞いていた。私なら絶対途中で「え~」とか「ひど~い」とかを挟まずにはいられない。いま私はあなたに共感していますよ、というアピールをせずにはいられない。

けれど江角さんはそれをしない。この人は決して相手に媚びないんだ、だからこの人は美しいんだー。

かつてテレビ画面の向こうの女優に見たのと同種の潔さみたいなものが、たったいま出会った田舎のパン屋の店員さんに重なり合う。どうか、あのかっこいい店員さんが近所のバカ息子のおうちの壁に落書きなんてしませんように。そんなことを願いつつ、道後に到着。

 

駐車場に車を停めると、早速目の前に足湯があった。さすが道後。

 

「ちょ、毛!www 毛ぇやばいって!www」と、ひとしきりきゃっきゃする。

 

どうごゆけむりかふぇ。かかかわいい。

 

 

店内。2階がイートインスペースになっている。(かっわいいー!)

 

みたらしじぇらーとセット。ひらがなの「じぇらーと」かわいい。

 

大口叩いててかわいい。

(とは言え世界一当たる占いと世界一当たらない占いの実力差なんて僅差なのかもしれない。)

 

触れられそうなのに、届かない。甘酸っぱい距離感がかわいい。

 

 

当然スヌーピーはかわいい。かわいいの代表格。ミニチュアサイズのお買い物カゴもかわいい。

 

坊っちゃんラクリ時計。45分後にもっとかわいくなる。(※待てません)

 

レトロカワイイ。

 

かっこかわいい。

 

武将のくせにかわいい。

 

松山城ロープウェイ(リフト)。

「足元に ことばの落としもの あります。」坊っちゃんイズムと子規イズムの息づく町。

 

坊っちゃんイズムを守り、子規イズムをつなぐ。

 

番外編)かわいいお土産

 

結論。

女子は何歳になっても、すね毛の処理すらやらないおばさんに成り下がっても、かわいいが好き。かわいいは最強。

そしてお土産のだるま(なんて愛くるしいお顔!)は、知人と

「こ、これ、石に色塗っとるだけ、よね…?」

「ええ商売しとんな」

と確認しあった上で、自分と友人のお土産に2個購入。

「かわいい」には、商機がある。