父、母、私の3人で、姪っ子のピアノの発表会を見に行きました。
普段の姪っ子の練習風景を見ていると、「え…この調子で本番に間に合う…?」とちょっと心配になったのですが、発表会当日、そんなのはただの杞憂だったことを知りました。
年齢の小さな子から順に演奏するのだけれど、みんな、等身大の自分。
途中で演奏を止めて舞台袖の先生の方を振り返ったまま動かなくなる子、首をかしげながら同じフレーズを繰り返し弾き続ける子、そんなわけない短さでさっさと演奏を終わらせて帰る子、等々…。
そう、ここは完璧な演奏をする場所ではなく、出来栄えはどうあれ、現状の力量そのまんまをみなさんに披露する場所でした。
あと特に女の子は、普段は着られない特別な衣装でお姫様に変身する場所でもありました。なんならピアノよりそっちの方が比重は大きいのかなと思わされる、誰も彼もきらびやかなドレス。
そんな中、ふてくされたお姫様然として登場した姪っ子も、たどたどしいながらもどうにか最後まで曲を弾き終えました。
肩をだらんと下げて前屈みたいなへんな会釈をする姪っ子に拍手を送りながら、彼女の発表曲はとっくに(ネットで買ったドレスが届いた時点で)仕上がっていたことを知る私。派手なドレス、と横でぼそっと呟く母。そういや私や妹は、子どもの頃ああいうのは着させてもらえなかったな。
学年が上がるにつれ演奏のレベルも上がり、中学生ともなるとみんなめちゃめちゃ上手で、ドレス姿も大人っぽくて美しかったです。
子ども達(と、先生)に混ざって、一人だけ大人の女性がいました。
何度もミスをして混乱しているように見えた彼女は、しかし次の瞬間、観客席に向けて照れ笑いを浮かべつつ「もう1回」と言い、最初からやり直しました。会場からは、あたたかい笑いが起こりました。
大人だからこその、(いい意味での)図太さ。
素敵な人だな、と思いました。
きっと彼女は大人になってからピアノを習い始めたのだろう。
子どもの頃ピアノが嫌で嫌でバイエルの途中で投げ出した私にはない、挑戦する姿勢を目の当たりにしたような気がしました。
ピアノに限らず、私はいつも一歩が踏み出せないでいる。
やらない言い訳ばかりを探している。
今日、いま、この瞬間だって。
プログラム中盤、ピアノの先生と小さな女の子の連弾で、『翼をください』の演奏がありました。
演奏前に先生がマイクを持ち、「とても有名な曲ですので、歌える方はぜひ歌ってください』と言ったけれど、誰も歌いませんでした。
私も歌いませんでした。
歌詞なら完璧に、頭に入っているのに。
ヤカラと2人きりの車中では、「うるせえ黙れ!!」と嫌がられても大音量で熱唱しているのに。
私には、翼がない。
「もう1回」と笑って演奏をやり直したあの彼女にはきっと、小さな翼がある。
「この大空に翼を広げ
飛んで行きたいよ
悲しみの無い 自由な空へ
翼はためかせ 行きたい」
もしもあの瞬間、観客席から声を張り上げて歌うことができていたなら、私の背中にも白い翼がにょきにょきと生えて、どこにでも飛んで行けたんじゃないかという気がするのです。
本当に生えたら着る服に困りそうだけど。
ねえ、こんなバナーあるんだけど、押してくれる?