昨日妹が体調を崩したそうで、ちょうど実家に行く予定だったので(※実家から妹宅はすぐそこ)「なんかいる?」と電話して聞いてみた。
「いらん…… 」
と電話の向こうから聞こえるかすれた声は、かなりしんどそう。
「いまから実家行くから、ゼリーか何か買っていくけど」
「いらん… 私昨日から全然食欲なくて… 今朝… 八朔を一房食べただけなんだけど…お腹にちょっとでもモノ入れると気持ち悪くなって…」
「なにそれ、大丈夫?」
「だいじょうぶじゃない……でもどうしてもって言うなら……リンゴくらいなら食べれるかも……」
「り、りんごか…(めんどくせえな、途中ドラッグストアとコンビニしか通らないんよ)…ヨーグルトじゃだめ?」
「いや…ほんと…なんもいらん……」
「おっけー、わかった(ホッ)」
「……あ そういや…… 食べたいものの話じゃないんだけど……くらしる?違うな……くらしい?だっけ…… なんか雑誌が炎上したって話……知っとる……?」
「え?知らん」
「くらしいとかいう雑誌の……1か月着回しコーデだかそんな企画で……看護師が医者とドロドロ不倫……みたいなやつが……めっちゃ炎上しとんだって……どうでもよくない?……フィーークーーショーーンーー!……もうそこ文句言い出したらドラマも小説も全部だめやろーって……」
「う、うん…」
いま…?
その話、そんなぜえぜえしながらいまこのタイミングでする?と思いつつ、そうね、と言って電話を切った。
ダメ元でドラッグストアに寄ったけどやっぱりリンゴはなくて、ヨーグルトで許してもらおうと思って(リンゴなら高確率で実家に2、3個あるだろうし)アロエヨーグルトだけ買って、ついでにセブンイレブンにも寄ったらまさかの!カットされたリンゴ売ってた!コンビニなんでもあるな!
リンゴと、冷凍イチゴも追加する。あと私のためのスイーツと。
そして今日、「くらしー」「ドロドロ不倫」「炎上」で検索してみた。
妹が言っていたのは、『CLASSY.』という雑誌の「ドロドロ病院内不倫を卒業して、新たな恋に踏み出さなきゃ!?オペ看護師が主人公!スカートしばりの3月着回しDIARY」という特集のことだった。
看護師の着回し企画に医者との不倫設定を付加したことで、現役の医療機関従事者を名乗る人や、そうじゃない人からも、怒りや抗議の声が続出しているらしい。
「下品すぎる」「不倫コーデに需要はない」「酷すぎる、頭おかしい」「センス無い」「このご時世で不倫を扱うのはあり得ない」「なぜ不倫、なぜオペ看」「偏見まみれの職業差別」「働く女性を応援する雑誌に相応しくない」「医療従事者に対する侮辱」
想像してたより、けっこう燃えていた。
…私達は一体、目に見えない(いるのかいないのかもよくわからない)誰かのことを、どこまで配慮しなければならないのだろう…
大昔、学生の頃に『マディソン郡の橋』っていう映画がすごい話題になってて、当時多くの人が「感動した」とか「泣いた」とか言ってて、私はこれ見てないから「どうやら不倫映画らしい」ってこと以外全然知らないんだけど、私この映画をみんなが褒め称えるのめっちゃ気持ち悪いなーと思っていて。
不倫映画だからイヤってわけじゃなくて、実際に不倫したらみんな怒るくせに、フィクションならいいんかよ、って。それはつまり想像力の欠如ではないのか、と。あなた達は小説や映画でちゃんと順を追って当事者の心情をきっちり説明されれば共感して泣いたり苦しんだりするのに、内情を知れない石田純一の不倫はただただ責めて怒るんですね?と。
でも今にして思えば、フィクションにすらもブチギレる今よりは、あの頃のおおらかさの方がずっとマシだったのかもしれない。
*
『CLASSY.』のターゲット層は、20代後半から30代前半のOLなのだそうだ。(私は対象外、か)
完全にスベってるとか、トガり過ぎましたねとか、着回しコーデで不倫設定にする意味がわからないとか、CLASSYはもっとかっこいいファッション誌だったのにいつからこんな下品になったんだとか、色々言われていたけれど、果たしてそうなんだろうか…
私ね、学生の頃は、不倫なんて芸能人しかやってないと思ってたんですよ。
顔面がイケてる男女だけに許された道楽だと思ってたんですよ。マジで。
でも社会人になって、はじめての職場の不倫率が高くてびっくりした。「へー、こんな普通の(ぱっとしない)一般人もやってるんだー」って、それは善悪を超えた新鮮な驚きだった。
はじめての職場だけじゃない。いろんな人の、いろんな不倫を見てきた。
だからこの雑誌も、スベったとか尖ったとかじゃなく、ただ、ありふれた1人の女性の、ありふれた日常を描いただけなんじゃないかなって、思った。
ファッションは、人生だ。
そこには「かっこいい」「イケてる」姿だけじゃなくて、失敗だって無数にある。イケてる時もイケてない時も、いつだってファッションは「私」に寄り添ってくれている。
そしてこの特集は、不倫を肯定しているわけではない。このオペ看護師さんも、結果ドロドロ病院内不倫を卒業してるんですよね?新しい恋に一歩踏み出したんですよね?(タイトルから想像してるだけだけど、そういうことですよね?)批判するよりもまずは、そのことを喜んであげようよ。
あえての「不倫」設定は、どんなあなたにも寄り添うという雑誌の姿勢を示し、働く若い女性を応援する使命を果たしていると言えるんじゃないだろうか。
って思いながらさらにネット見てたら、これ、「オペ看護師が暴露系ユーチューバーに突撃されて不倫がバレて慰謝料200万円を請求されて結局仕事を辞める」て内容らしい。なんだそれ!しかもなんなの、「慰謝料請求された時のコーデ」って。コーデ楽しんでる場合かよ。
これはさすがにアウトかもしれない……いや、にしてもこんなもんによくみんな真剣に怒れるな、こんだけばかばかしいと逆に笑っちゃったけどな…
そしてこれはもう企画の是非とは別の問題で、炎上したからっていちいち謝んなよ、と思う。企業側に対して、いつも思う。
私は謝罪なんかよりも、反論を聞きたい。この特集を組んだ理由を聞きたい。何かしらあったんじゃないの?突き抜けてばかげたことやってみんなに笑ってほしかったとか、不倫で失敗した人へのエールだとか(さすがに無理か)、強い思いが。何か。
それを「不適切で配慮に欠けるものでした」「医療に従事する関係者の皆様、読者の皆様に謹んでお詫び申し上げます」なんて安っぽい言葉だけでさっさと終わらせるのは、無責任過ぎやしませんか。おまえらには自分らが作り上げた作品への信念はないのか!
…と怒ってみて、でもまあこんだけいちいち炎上する時代だから、企業も「謝罪までがワンセット」くらいのモチベーションでやってんのかもな、と思ってみたり。「ばか(世間)は頭下げときゃそのうちすぐ忘れるんだから、やりたいことやろーぜ!」的な…(そのスタイルは支持します
ちなみに、私はこの手の雑誌は一切読まない。
美容院でしか触ったことないけど、『CLASSY』とか『Oggi』とかのごついやつは、重くて腕が疲れるので、読もうというか、まず持とうという気にならん。