有休をとって、知人と日帰りで道後へ。
道後を目指して県道を車で走っていると、「みかんパン」の大きな看板を掲げたパン屋さんに遭遇。朝食に立ち寄ることに。
入口扉横のスタンドボードに、『本日のおすすめ』と写真付きで紹介されている車海老のビスク風にも期待値が高まる。絶対食べる!
店内には、中年の女性が一人レジに立っていて、無言でパンを袋に詰めていた。彼女は私たちを一瞥していらっしゃいませ、と言った(ような気がするけれどもしかしたら何も言わなかったかもしれない)。
何はともあれビスク風、ビスク風、と小さな店内を見渡すもそれらしきものはどこにもない。けれど他にもおいしそうなパンが色々並んでいたので、結局私はバゲットサンドを、知人は菓子パンを何個か選んだ。
レジで支払い時に、店員さんにおそるおそる「あの…本日のおすすめって、何処にありますか…?」と聞いてみると、彼女はポーカーフェイスを崩すことなく「本日のおすすめは11時からです。ボードにもそう書いてあるんですが」とさらっと答えた。時計を見ると、まだ9時ちょい過ぎ。
なるほど。
もしも私がここの店員なら、残念さと申し訳なさを混在させたようなわざとらしい笑顔を作って
「あああ…ごめんなさい!本日のおすすめは11時からなんですよぉ。ボードには一応明記してあるんですけど、あれ字が小っちゃくてわかりづらいんですよね。ごめんなさい!」
て言う。
まず謝る。それから客の気持ちに寄り添う。そして最後にもっぺんダメ押しで謝る。
(実際後で確認したら「11時から云々」の文字はパンの写真右下隅っこに小さく記載されていた。言っとくけどこっちはそんな隅々まで丁寧に見てねえかんな!)
けれど、レジの女性は別に接客態度が悪かったのではない。ただ、愛想がなかっただけ。そしてそういう「ちょっとあれな感じ」は、旅情、とでもいうのか、旅に可笑しみを添えもする。
しかも、パンがめちゃめちゃ美味しかった。
三種類のサンドイッチが入ってたんだけど、バゲットの味が全部違うの。何練り込んでたんだろ…緑っぽかったのは、ヨモギ…?いやわからん(味音痴)、あんだけミカン推してんだから一つはミカンだったのかな、わからんけどとにかく美味しかった。
そして味が良いと、先ほど受けた素っ気ない接客にも、実直さ、みたいな新たな印象が加わる。パン作ってる人と売ってる人は一緒じゃないにしても。
そうだ。同じ接客業従事者として、思えば私はいままでどれほどその場しのぎの作り笑いで他人を、自分を、はぐらかしてきたのだろう…。どれほど心をすり減らしてきたのだろう…。ああ、職人さんがこだわって焼いたバゲットの誠実な味が、荒んだ五臓六腑に沁み渡る。
二十年以上昔、私がまだギリ学生だった頃、女優の江角マキコさんが一般女性の恋愛相談に答えるというバラエティー番組の企画があったことを思い出した。
江角マキコさんのことは『輝け隣太郎』というドラマで初めて知って、綺麗な顔と棒読み風のセリフ回しの取り合わせがなんだかおもしろい人だな、くらいの認識だったが、何故なのかその日の私は、女性達のお悩みに向き合う江角さんの美しさに圧倒され、目が離せなくなってしまったのだった。そしてその理由にも、すぐ気づいた。
この人、人の話に全っっ然相槌を打たないんだ…、と。
彼女は一般女性の失恋エピソードを眉一つ動かすことなく、ただ無言で聞いていた。私なら絶対途中で「え~」とか「ひど~い」とかを挟まずにはいられない。いま私はあなたに共感していますよ、というアピールをせずにはいられない。
けれど江角さんはそれをしない。この人は決して相手に媚びないんだ、だからこの人は美しいんだー。
かつてテレビ画面の向こうの女優に見たのと同種の潔さみたいなものが、たったいま出会った田舎のパン屋の店員さんに重なり合う。どうか、あのかっこいい店員さんが近所のバカ息子のおうちの壁に落書きなんてしませんように。そんなことを願いつつ、道後に到着。
駐車場に車を停めると、早速目の前に足湯があった。さすが道後。
「ちょ、毛!www 毛ぇやばいって!www」と、ひとしきりきゃっきゃする。
どうごゆけむりかふぇ。かかかわいい。
店内。2階がイートインスペースになっている。(かっわいいー!)
みたらしじぇらーとセット。ひらがなの「じぇらーと」かわいい。
大口叩いててかわいい。
(とは言え世界一当たる占いと世界一当たらない占いの実力差なんて僅差なのかもしれない。)
触れられそうなのに、届かない。甘酸っぱい距離感がかわいい。
当然スヌーピーはかわいい。かわいいの代表格。ミニチュアサイズのお買い物カゴもかわいい。
坊っちゃんカラクリ時計。45分後にもっとかわいくなる。(※待てません)
レトロカワイイ。
かっこかわいい。
武将のくせにかわいい。
松山城ロープウェイ(リフト)。
「足元に ことばの落としもの あります。」坊っちゃんイズムと子規イズムの息づく町。
坊っちゃんイズムを守り、子規イズムをつなぐ。
番外編)かわいいお土産
結論。
女子は何歳になっても、すね毛の処理すらやらないおばさんに成り下がっても、かわいいが好き。かわいいは最強。
そしてお土産のだるま(なんて愛くるしいお顔!)は、知人と
「こ、これ、石に色塗っとるだけ、よね…?」
「ええ商売しとんな」
と確認しあった上で、自分と友人のお土産に2個購入。
「かわいい」には、商機がある。