スカッとしないジャパン【バレンタイン事変】

小林麻耶さんが「ぶりっ子」界の頂点に君臨し栄華を極めていたあの時代、

 

「うがあああ!!!マジで男ってバカ!!!なんであんな糞女の本性見抜けねえんだよおおおうああぎゃああ!!!」

 

と絶叫しながら心のムカッとボタンを乱打していた北斗晶さんや世の女性たちに、いまさらだけど伝えたい真実がある。

 

男は女の本性が見抜けないんじゃない。

見抜いたから愛するんだよ、ってこと。

単純に「ぶりっこ→かわいい→好き♡」の図式が成り立っているのではなく、その背後にある黒い部分も含めて、きっと男は女を愛するのだ。

 

 

昔やっていた『痛快TVスカッとジャパン』というバラエティ番組で、かつてとても印象的な回があった。

主な登場人物は、ヒロイン(会社員)、ヒロインの憧れの先輩男、そしてヒロインの先輩女(小林麻耶)の3名。

ヒロインが想いを寄せる職場の先輩は、イケメンで優しくて仕事ができるハイスぺ男。彼女はそんな彼のためにバレンタインデーにこっそり手作りチョコレートを用意するのだけれど、小林麻耶がそれを目ざとく見つけてあからさまに邪魔をする。

「え~、(ヒロイン)ちゃん、好きな人いないって言ってたよね~!てことはぁ、これ、わたしにくれるんだよね!?ありがと~(きゃぴ!)」

とだいぶ強引にチョコレートを奪い、なんとハイスぺ男に「わたしの手作りですぅ~(きゃぴ!)」と偽ってそのまま渡すのだ。

意地悪するにしても、素人の手作りチョコだなんて危ういもの、私なら味も形も確認せずに渡す勇気はない。どんだけヒロインのこと信頼してんの。もしかしたらヒロインは普段から会社に手作りのお菓子をよく持ってくるタイプの子だったのかな…にしても、中に手紙でも入ってたらどうするつもりよ。麻耶ちゃんピュア過ぎるだろ。

 

そんな視聴者の心配をよそに、一点の曇りもない笑顔でハイスペ男にチョコレートを渡す麻耶ちゃん。

「嬉しいよ…」とまんざらでもなさげな反応のハイスぺ。

 

(えー!そんなー!ヒロインはどうなっちゃうのぉー!?ドキドキ!)

 

しかしそこは『世の中のムカッとをスカッとに変える!』スカッとジャパン。心配ご無用なのだ。

ハイスぺは、「嬉しいよ…」から、こう続ける。

 

「だってこれ、(ヒロイン)さんの手作りでしょう?」

 

なんと、彼は麻耶ちゃんがヒロインからチョコを奪う一連のやりとりをすべて、偶然、都合よく、こっそり物陰から見ていたのだった。その後ヒロインとハイスぺはめでたくラブな関係に。腹黒ぶりっこ女は見事成敗されて、メデタシメデタシの結末となる。

 

当時、この番組を一緒に見ていたまだ知り合って間もなかった彼が、小林麻耶さん演じる先輩女を

「俺、全然嫌じゃない。むしろ好み。」

というので驚いた。

えっ、まじで?この先輩女、善悪を絶対的に二分化して描く番組の趣旨に沿って、長所なんてなにひとつない悪女として振る舞っていたはずなのに。

彼)「だって俺(先輩男)には実害ないし」

私)「でもこの子すごい性格悪いんよ?」

彼)「そうかな?他人を蹴落としてでも自分を売り込むたくましさがかわいいし嬉しい」

私)「でもこの子本当は自分でチョコなんか作れないよ?いいの?」

彼)「キミだってチョコなんか作れないでしょうが!」

私)「お、おん… 」

 

私は時々

自分ばかりが正しいように錯覚してしまうことがある。

でもそうじゃないんだ。

人にはそれぞれ、人の数だけ、自身の正義や信念や判断基準がある。

そんな当たり前のことを考えさせられた。

ある側面から見れば「腹黒女」な彼女は、ほんの少し視点をずらせば、欲しいものを全力で獲りにいくパワフルな女性だ。そのガッツに魅力を感じる男性がいても当然だし、彼女には愛される資格が十分にある。

 

「でもこのハイスペ、まだまだ未熟だわー」とさらに彼が言う。

 

「俺なら何も知らないふりして、ありがとー!つって麻耶ちゃんからチョコ受け取って付き合うね。そんで後から事実を知ったことにしてヒロインに乗り換える。そうすれば両方いけるよねー!」

 

かしこ! て思った。

(人の数だけ、正義はある)

 

 

そんな彼とも10年のつきあいになろうとしている。

今3月14日(20:47)なんだけど、ホワイトデーのお返しはまだない。

そういや2月14日はバレンタインデーだったけど、私もまだチョコレートあげてない。