女神様の婚活パーティー

3/2放送の名探偵コナン『千速と重悟の婚活パーティー(前編)』の、萩原千速さんの奔放っぷりに愕然としている。

 

萩原千速とは、『名探偵コナン』に登場する、神奈川県警察の警部補。

彼女は以前、犯人追跡中のコナン君を助け、白バイでどえらいドライビングテクニックを見せつけた「風の女神」様である。

 

この女神様、今回登場シーンからいきなり視聴者(私)を困惑させる。

舞台はとあるレストランで開催されていた、『マスカレード婚活パーティー』。

「マスカレード」は仮面舞踏会、仮装パーティー、の意。「マスカレード婚活パーティー」は、仮面で顔を隠した婚活イベントだ。

そこに参加していた女神様。彼女は会場で同僚の横溝重悟警部を見つけて声をかけるんだけど、その際「私だ、私!」としょっぱなから自らの仮面を外してしまう。

なんというマナー違反。

当然、慌てて駆け寄ってきたスタッフから注意を受けることになるものの、突如晒された美女の素顔に会場の男性陣からは歓声が上がる。まさに女の敵。

そんな女神様の目的は婚活ではなく、ここで出される豪華な料理だった。このパーティー、女性は参加費無料で有名レストランの食事が食べ放題。それにつられてやってきたらしい。あと友人の付き添い、ていう理由もある。

ちなみに、横溝警部もこの婚活パーティーに「嫌々来た」感をちょいちょい主張している。

 

『べつにあたし婚活なんてどうでもよくてごはん食べにきただけですから~』くらいのマウントは、まあいい。中にはそういう(体の)人もいるだろう。彼女が悪質なのは、ここからだ。

フリータイムが終了し、各自意中の人の名前を5人カードに書き込む。そしていよいよカップル成立者の発表が始まった。

ここでさらに、特に人気が集中した女性2人に追加のアプローチタイムが設けられることが進行役のスタッフから告げられる。人気の女性2人と彼女らが選んだ男性各4人が、この後別室で二人きりで10分ずつ会話をする。そこでカップルが成立すれば豪華ディナーがプレゼントされるのだという。

え、わざわざ?結果発表だつってんのに、いまさら何その延長戦?しかも最後の人なんて自分の番まで30分待ってなきゃなんないの?それもうこれから起きる殺人事件の舞台をお膳立てするためだけの無茶な設定としか…みたいな疑問が湧き上がるが、コナン君でそれ言いだしたらキリがないので、そこは目を瞑る。

で、選ばれた女性2人のうちの1人が、女神様だった。(だろうな、と納得の様子の横溝警部。)

そこで彼女は信じられない発言をする。

 

「やったな重悟ー!私が重悟を選べば二人で豪華ディナーだぜー☆」

 

『あたし色気より食い気ですから~』アピールをどこまでも押し通す、全然ブレない女神様。

いや、待って?この人、何で自分が横溝警部に選ばれてる前提で物言ってんの?自信家が過ぎない?それともまさか、二人で示し合わせてたの?なにその出来レース…それで豪華ディナーの特典まで持ってくのはさすがにちょっと許しがたい。詐欺じゃんか。

一方の横溝警部はといえば、「いや…それが…」と、なんか様子がおかしい。実は彼、女神様の番号を覚えていなかったらしい。

「はああ!?私の番号を覚えてなかったあ!?どうすんだ!コースディナー!」

じゃねえわ… おまえふざけるのもいい加減にしろよ…

 

この女神様、女よりも、むしろ男の敵だった。

 

あのね、この婚活パーティー

女性は参加費無料だけど、男性は1万円も支払ってんのよ。

貴重な時間と、お金を使って、きっと切実な思いで参加してんのよ。

 

女神様の数々の無神経な言動の根底には、婚活パーティーやその参加者を軽視する気持ちがあるように思う。横溝警部にしてもそうだ。俺おまえの番号覚えてなくて適当な数字書いちゃった~(テヘ★)、じゃねえのよ。

おまえらの恋愛(未満)の幼稚ないちゃこらに無関係なモブ巻き込んでんじゃねーわ!!なめんな!!!

そういや、毛利小五郎さんもだ。

彼はホテルの昼食を諦めて立ち去る際、「ふん!どうせ結婚に飢えた男と女が仮面つけてこっそり婚活するんだろうよ」と、ちょっといやなふうに言っていた。あいつも許さん。

 

萩原千速。

神奈川県警交通部・第三交通機動隊小隊長。警部補。31歳。

(女性の31歳は、そろそろ生き方の方向性を決めといた方がよさそうな微妙な年齢な気もするけれど、この人はきっと10年後も20年後も31歳だろうから、そこは問題ないのだろう。)

公務員だし、当然経済的にも自立した女性。美人で異性からもモテる。

弟と、さらには自分を慕ってくれていた弟の親友までも続けて爆弾事件で亡くし、白バイを運転すれば羽ふぁっさーーー生やして空を舞っちゃうようなドラマチックな人生を生きている彼女にとっては、婚活なんて馬鹿らしいことなのかもしれない。

けれど、だからといって、自身の尺度でモブキャラの人生を侮っていいわけではない。

 

私は40代で、独身(バツイチ)で、結婚願望はないし子どももいない。自分には結婚も子育ても向いてないと思っている。けれど、そういう生き方を「多様性の時代」を大義名分に正当化するつもりはない。私が許容されているのは、結婚しない・子どもを産まない選択がまだまだギリ少数派だからというだけだ。だって、難しいことはよくわからないけれど、単純に考えて、このまま少子化が加速して人間がいなくなれば国は亡びる。

婚活は、国策だ。

日本の少子化問題はニュースでも度々取り沙汰される深刻な課題であり、解決のために婚活支援は欠かせない。国は婚活ビジネスに助成金を投入している。

結婚する気もないくせにおいしいランチをタダで食い散らかして、しかも豪華ディナー特典までかっさらっていこうだなんて、おまえそれ不正受給だかんな!!

 

 

…ていうような話を熱く語り合える友人がまじで一人もいないので(誰かこんな私とお友達になってくれませんか)、父(74歳)に「今回のコナンが炎上案件だったよー!」って怒りをぶちまけたら、「いや、名探偵コナンをそういう目線で見てる人ひとりもいないから」と冷静に言われた。そうなの?

 

けれど思い返せば、今回の婚活パーティーで、千速さんは本当はヒントをくれてもいた。

彼女はフリータイム中に男性参加者から何を質問されても、視線を合わせることもなく、不機嫌そうに、ただひたすら「バイク!」「バイク!」「バイク!」を連呼していた。めちゃめちゃ感じ悪かったのである。これが大人の振る舞いか、と震えるほどだったけれど、あれは婚活する気なんてさらさらなかった彼女なりの、相手に対するせめてもの誠意だったのかもしれない。

なのに彼女の顔面だけに群がってきた男達。彼らサイドにも問題の一端がありそうだ。1万円は授業料としては安いもんだよ。おまえらも出直してこい。そして次こそは幸せを掴めよな!

 

あと毎週毎週こうも麻酔針刺されてばっかりで、小五郎さんの身にもし何かあって手術とかになった時、ちゃんと麻酔効くのか心配。